肝の主な働きは全身の気の運行、精神・情緒の安定、血の貯蔵
さらに筋・目の生理機能を維持することです。
肝は疏泄を主る
(かんはそせつをつかさどる)
肝は全身の気を運行させ、さらに精神状態を安定させます。
①気を運行させる
肝には全身の気を順調に巡らせる働きがあります。
肝はこの疏泄の働きで全身の気の運行を調節しています。
肝の疏泄力が弱くなってしまうと気の流れが停滞し
その結果、肝・胆の経絡上に張りや痛みがあらわれます。
②精神状態を安定させる
肝は常にのびのびとし、気持ちの良い状態を好みます。
肝の疏泄が正常ならば、全身の気血の巡りが順調で、感情が安定し正しい判断ができます。
外界のストレス刺激を受けると、肝の疏泄が弱くなってしまい、
このときに、イライラしたり、怒りっぽくなったり、憂うつ感が出たり、猜疑心が強くなったり
ため息が多いなどの精神症状がよく現れます。
③消化を助ける
肝は飲食物の消化・吸収を補助します。
飲食物の消化吸収の過程は「脾・胃」の運化作用により営まれますが
肝は気血をスムーズに運行させ、この「脾・胃」の働きが順調に営まれるように補助している役割を担っています。
また、肝の腑である「胆」は飲食物の消化を助ける「胆汁」を分泌・排泄します。
もし、肝の疏泄が弱まれば、げっぷ、胃もたれ、下痢、腹痛、腹が張るなどの症状があらわれます。
疏泄の働きが弱ると起こる症状
下痢・吐き気・腹痛・胃もたれ
腹の張り・脇の張り・口が苦い・
抑うつ・イライラ・怒りっぽい
顔がのぼせる・手足が冷える・便秘気味
肝は血を蔵す
≪肝は血の貯蔵庫である≫
「血」は身体にとって重要な栄養物質です。
肝はこの血を貯蔵・補給する働きがあります。
例えば、運動時には筋肉に大量の血が必要であり、読書時には目に大量の血が必要となります。
この時、肝は貯えてある血を筋肉や目に与え、その活動を栄養面から支えています。
また、安静時や睡眠時には血の消耗は少ないので、必要以外の血は一旦肝に戻り貯えられます。
この一連の働きを「肝は血を蔵す」と言っています。
肝血の不足は筋肉のけいれん、知覚麻痺、目が見えにくい、目が乾く、思考力低下などの症状を引き起こします。
血を蔵す働きが弱ったら起こる症状
めまい・手足のしびれ・ひきつれ
月経過少・閉経・吐血・鼻血・不正出血
肝は筋を主る
≪肝は筋肉の働きを維持する≫
筋肉の働きは肝の血によって維持されています。
したがって、肝血が十分であれば筋肉の働きがよく、
長時間の労働や運動が可能となります。
肝に異常があると、筋肉のけいれん、ふるえ、知覚麻痺などの症状があらわれます。
筋を主る働きが弱ったときに起こる症状
手足のしびれ・ひきつれ・月経痛・筋肉痛・肩こり・腰痛
備考 中医学による「筋肉」
中医学では筋肉を「働き」と「形」両面から観察しています。
「働き」から見た場合の筋肉は「筋」と呼ばれ肝血によって維持されていると考えます。
一方、「形」から見た場合は、肉付きが良いとか悪いとか表現され、「肌肉」と呼ぶ習慣があり、これは「脾」の働きによって維持されていると考えます。
肝は眼に開窮する
(肝は眼にかいきゅうする)
≪肝は眼の働きを維持し、肝の病変は眼にあらわれる≫
目の生理的な働きは、肝血からの滋養に頼っています。
肝が目に十分な血を供給すれば、物がはっきり見え、乾燥することもありません。
肝の血が不足すれば、目は滋養されず、視力障害、眼精疲労、目の乾燥となってあらわれます。
また、肝に属する「厥陰肝経」や「小腸胆経」は目と連絡しており、
肝の病変は「目が赤い」「目の奥が痛い」などの症状となってあらわれます。
目に開窮する働きが弱ると起こる症状
めまい・目の疲れ・目の充血・目の乾燥・目がチクチクする
その他目の疾患